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相続財産清算人について

2023.05.31 家族問題(相続・遺言、離婚)

 弁護士の樋口です。

 以下の①や②の場合,利害関係人が,家庭裁判所に申立をすることで,相続財産清算人を選任してもらうことができます。
① 身寄りがなく,相続人がそもそも誰もいなかった場合
② 相続人全員が相続放棄をして,結果として相続する人がいなくなった場合

 相続財産清算人は,亡くなった方の債権者等に対して亡くなった方の債務を支払うなどして清算を行い,プラスの資産が残っていれば,相続財産を国庫に帰属させます。
 元々は,相続財産管理人と呼ばれておりましたが,「民法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第24号)施行に伴い,令和5年4月1日より,相続財産清算人に名称が変更されました。また,従前は3種類の官報公告を順次行っていく必要があり,権利関係の確定までに10か月以上を要していましたが,上記法改正により,権利関係の確定までに要する期間が6か月に短縮されることとなりました。

 相続財産清算人という制度ですが,私の経験上,上記①又は②に該当し,亡くなった方名義の不動産(単独名義,共有名義いずれも)を処分したい場合,利用されることが多いです。例えば,自治体が,滞納している税金の回収やいわゆる空き家対策を目的として,相続財産清算人の選任の申立を行います。
 また,諸事情により亡くなった配偶者の遺産を相続したくない(ex.多額の借金を抱えていた)ものの,夫婦共有名義の不動産を処分したい場合,配偶者は相続放棄をした上で,相続財産清算人の選任の申立が可能です。実際,当事務所の解決事例【相続⑦】のように,この制度を利用して解決することができました。
http://www.kanadelaw.com/solution/%e7%9b%b8%e7%b6%9a%e2%91%a6