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戸籍証明書の広域交付制度について

2024.02.28 家族問題(相続・遺言、離婚)

 弁護士の樋口です。

 令和6年3月1日より,戸籍法の一部を改正する法律が施行され,本籍地以外の市区町村の窓口でも,戸籍証明書・除籍証明書を請求できるようになります。これを,「広域交付制度」と呼ぶようです。
法務省:戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)

 広域交付制度が開始されることにより,最寄りの市区町村へ「ご本人」が「来訪」することで,「コンピュータ化された戸籍」を纏めて入手することができます。
 これまでは,入手したい戸籍の本籍地の市町村役場それぞれ,郵送又は来訪しないと,戸籍を取り寄せすることができませんでした。相続が発生した際,必ず,相続人が誰かを示す戸籍謄本を入手する必要があります。広域交付制度開始により,相続発生時の戸籍謄本取り寄せの作業は,多少,楽になったように思われます。
 もっとも,以下のとおり,2点,注意すべき点がございます。
① 1点目は,広域交付制度により纏めて入手できる戸籍は,あくまで,「コンピュータ化された戸籍」です。コンピュータ化されていない戸籍は,これまで同様,本籍地の市町村役場から取り寄せる他ございません。
 千葉市中央区区政事務センターに確認したところ,どの時期まで遡ってコンピュータ化しているかについては,自治体毎に,異なるようです。

② 2点目は,広域交付制度により纏めて入手するためには,最寄りの市区町村へ「ご本人」が「来訪」しなければいけないことです。つまり,弁護士等の代理人は広域交付制度を利用できませんし,ご本人であっても,郵送ですと広域交付制度を利用できません。

 弁護士としては,上記②のとおり広域交付制度を利用できないものの,相続のご相談を受ける際,相談者ご本人に持参いただく戸籍が増えることから,広域交付制度を利用する意義がある,と考えます。
 なお,戸籍法上,該当する戸籍に記載されたご本人は当然のこと,配偶者・直系親族(父母や祖父母,子や孫)も,戸籍を取り寄せることができます(戸籍法10条)。