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交通事故においてひき逃げされた場合の慰謝料

2025.11.28 交通事故

 弁護士の樋口です。

 交通事故に遭われ、治療のために通院を重ねたり、これ以上治療を継続しても症状が改善しない場合、加害者側に対し、通院に伴う慰謝料や、後遺障害の慰謝料を請求することができます。
 これらの慰謝料は、通常、日弁連交通事故センター東京支部が作成する「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準 上巻(基準編)」(通称、赤い本と呼ばれる本です)に基づき、算出されます。
 もっとも、事故態様や加害者の事故後の不誠実な態度が、場合によって、慰謝料増額事由に該当し、赤い本で算出される慰謝料を増額させることがあります。

 慰謝料増額事由の1つとして、ひき逃げ(報告義務違反)があります。2005(平成17)年版赤い本下巻髙取真理子裁判官執筆「2 慰謝料増額事由」においても、【ひき逃げは慰謝料の増額事由であり、裁判例において報告義務違反(ひき逃げ)を慰謝料増額事由としている】と記載されております(P33~P34)。
 ひき逃げの事実は、弁護士会の23条照会手続を通じて、交通事故の刑事事件の記録を謄写することで説明できます。

 では、赤い本で算出される金額をどのぐらい増額させることができるのかというと、ケースバイケースとしかいえません。
 ただ、2005(平成17)年版赤い本下巻髙取真理子裁判官執筆「2 慰謝料増額事由」において、【慰謝料増額の基準が設けられた意義に鑑みますと、通常の交通事故の慰謝料としては、この程度の増額幅、すなわち、割合的には2ないし3割増から、最大でも基準額の1.4倍程度までが目安となるのではないでしょうか】と記載されております(P38)。
 上記記載を踏まえ、1つの考え方として、ひき逃げの場合、赤い本で算出される金額から1.25倍(∵割合的には2ないし3割増とのことなので、中間値)の慰謝料を請求することは、不相当とはいえません。

 実際、ひき逃げの事案において、上記の考えの下、赤い本で算出される通院慰謝料・後遺障害慰謝料の125%を請求したところ、(裁判所等を利用しない)お話し合いでの早期解決であるものの、赤い本で算出される通院慰謝料・後遺障害慰謝料満額の113%程度(1割強の増額)の支払を受ける解決をすることができました。