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刑事事件における身柄拘束の流れ及び身体拘束からの解放について

2021.08.16 刑事

 捜査機関が犯罪をしたされる人物(被疑者)を逮捕した場合,逮捕から48時間以内に検察官に事件を送致しなければなりません。
 また,事件の送致を受けた検察官は,送致より24時間以内に裁判所に対して勾留請求を行うか否かを決める必要があります(①)。
 勾留請求とは,検察官が裁判所に対して,被疑者の身柄を引き続き拘束(勾留)して取り調べを行う許可を求める手続きになります(②)。
 裁判所より勾留決定が出されると通常,勾留請求の日より10日間の勾留が認められます(③)。
 10日間を経過した時点において,身体拘束を続ける必要があると検察官が判断した場合,更に10日間の勾留の延長を求めることができます(④)。
 勾留延長請求に対しても,裁判所の決定が必要になります(⑤)。
 その後,被疑者の終局処分(起訴,不起訴)を検察官が決定します(⑥)。
 なお,起訴となれば,原則として,裁判を公開法廷で受けることになり,裁判が開かれるまで身体拘束が続くことが原則となります。
 
 身体拘束の流れとしては上記のとおりで,被害者段階で考えると逮捕時から最大23日間身体拘束を受けることになります。捜査機関としても,20日間の勾留期間が使える前提で捜査の段取りを組み立てていると思われます。そのため,多く事案では,勾留が認められた場合,実務上,結果として最大の期間である20日間に勾留が及ぶケースが多く見受けられます。
 
 身体拘束を回避する弁護人の活動としては,以下の方法があります。
 ①の段階では,検察官に対して,そもそも勾留請求をする必要がないとの意見書を提出する。②の段階では,裁判所(裁判官)に対して,勾留決定をしないよう意見書を提出する,担当裁判官と面談するといった活動が考えられます。
 ③の段階では,勾留に対する準抗告(勾留決定に対する裁判所への不服申立手続き)を行う方法により,身体拘束からの解放を目指す方法があります。
 その後,④の段階では,検察官に対して勾留の延長に関する意見書の提出,⑤の段階では,延長を認めた決定に対する準抗告を行う方法があります。
 ⑥の段階では,適切な終局処分に対する意見書を提出します。
 
 上記一連の活動を通じて,被疑者の認否を問わず不必要な身体拘束を回避しつつ,捜査機関に対して迅速な捜査を促す効果があります。
 また,①から⑥の期間を通じて,被疑者が認めている事案などでは,被害者に対して被害弁償を行うなど被害者に対する謝罪活動を行い,勾留の必要性がなくなったことを訴え,身体解放を目指す活動も同時進行で進めていきます。
 なお,①から⑥までの捜査期間(終局処分の決定がされるまで)においては,保釈申立(裁判所に対して保釈金を納付して身体解放を得るという手段)は,法律上使えません。保釈制度は,起訴後に身体拘束からの解放を受ける手段として存在します。この点は,次回以降のかなで通信で詳しく述べたいと思います。
 いずれにせよ,身体拘束を受ける1日1日の価値は計り知れないものがあります。まずは,仮に逮捕・勾留された場合は,速やかに弁護士に相談し,その後の流れを理解した上で,対応を協議することが先決だと思われます。

以上

〔弁護士 相田敦史〕