経営者保証ガイドラインによる代表者の債務整理の実例紹介について
相田です。経営者保証ガイドラインを利用した会社代表者の債務整理について、私と当事務所の塩野弁護士及び他の事務所所属の弁護士1名で担当した案件が終了しました。これまでの破産手続きとは異なり、多くの財産が残せたことで依頼者の方にも満足が行く結果が得られましたので、簡単ではございますがご紹介をいたします。
昨年2月、代表者は、自身の体調不良などもあり、経営する法人の先行きに不安を感じ、他の事務所所属弁護士にまず法律相談をしました。
結論として、法人については、破産による法的手続きを、代表者は経営者保証ガイドラインによる処理を行うことになりました。
法人は、金属金物工事業を営む法人でした。当時、仕掛かり工事現場を複数抱えており、資金のショートのタイミングまで2週間程度しかありませんでした。規模と時間的な制約があるため、申立にあたり弁護士が複数で対応するべきとの判断のもと、当職及び当事務所の塩野弁護士に共同受任打診がありました。法人は、いわゆる密行型(事前に債権者に通知をせずに破産申立を行う方式)により相談から約2週間後破産申立を行いました。
破産管財人が専任され、当職等も管財業務に協力し、本年に入って配当手続きも無事に終了しました。
代表者については、法人の債務を連帯保証していました。保証債務額は1億円を超えており、債務整理の手続きは必須の事案でした。
これまでであれば、法的手続きとしては、代表者の体調問題から今後の就労の見通しが不安であることから、破産申立しか選択肢がない事案でした。
しかし、破産申立となれば、残せる財産として原則99万円相当の預貯金等しか残せないことになります。
今回、代表者は、体調不良などもあり、高額な解約返戻金は存在するものの医療保険や個人年金保険は是非残したいという意向が強い案件でした。
まさにそうした状況に適合する制度として、経営者保証ガイドラインによる私的整理手続が整備をされてきました。経営者保証ガイドラインは、早期に事業再生等に着手したことにより結果として経済的な損失拡大回避に尽力したこととの対価として、債権者としても一定の経済的合理性が認められる場合には、破産手続きを超える自由財産を残すことが認められます。
こうした経緯から、私を含む3名の弁護士が、支援専門家として経営者保証ガイドラインを利用した私的整理手続きを行いました。
保証債務の弁済案には、債権者全員の同意が必要であり、全ての同意を取り付けることが出来るに足りる弁済案を作成することや各債権者への説明・説得などに時間や労力がかかりました。幸い、千葉県中小企業活性化協議会や外部専門家のお力添えもあり、無事に弁済計画案は了承されました。
先月、手続きとしては全て終了し、結果として、約800万円を超える預貯金、医療保険及び個人年金保険を残すことができました。
代表者の方も健康不安を抱えるなかで、万が一に備える体制が整えることができてありがたいとの満足の言葉をいただきました。
以上、簡単ではございますが、ご報告をいたします。
私は、経営者保証ガイドラインを利用した私的整理手続きは初めての経験でしたが、当事務所には既に何件も経験をしている弁護士も在籍しております。また、今回ご紹介をしたとおり、当事務所以外の弁護士とも共同受任などの方法により、大型案件も取り扱っております。お役に立てることがございましたら、ご相談をいただければと思います。