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刑法・刑訴法令和5年改正について②

2023.10.31

刑法・刑訴法令和5年改正について②

今回は、令和5年の刑法・刑事訴訟法分野における2つの大きな改正の内、保釈について触れたいと思います。近時、保釈中に逃亡を図る被告人の存在がクローズアップされたことも議論の基礎となっています。有名なところでは、日産の元社長カルロスゴーン氏の逃亡事件などもありました。
なお、もう一つの大きな改正は性犯罪に関する処罰規定の改定です。

1 拘禁刑以上の刑に処する判決の宣告後における裁量保釈の要件の明確化
 不利益の程度が著しく高い場合でなければならないとされました。
 ただ、法制審議会の議事録によれば、あくまでもこれまでの取扱を条文上明確化したに過ぎず、殊更に限定しようとする趣旨ではないとされています。

2 逃走罪の主体の拡張及び法定刑の引上げがされ、改正後は「法令により拘禁された者」「3年以下の懲役」と改正されました(刑法97条)。従前は、1年以下の懲役でした。あわせて、加重逃走罪の主体の拡張も行われています。

3 公判期日への出頭等を確保するための罰則の新設も行われています。
 ・勾留の執行停止の期間満了後の被告人の不出頭罪
 ・保釈等をされた被告人の制限住居離脱罪
 ・保釈等の取消後における検察官の出頭命令・呼出しに違反する罪
 ・保釈・勾留執行停止をされた被告人の公判期日への不出頭罪
 ・刑の執行のための呼出しを受けた者の不出頭罪

4 保釈等をされている被告人に対する報告命令制度の創設
  裁判所は、定期的に又は変更が生じたときに、住居や労働の状況等の事項について報告することを命ずることができます。裁判所の命令に違反した場合は、保釈等が取り消され、保釈金が没収され得ることになります。

5 保釈等の取消し及び保釈金の没収に関する規定の整備
  実刑判決を受けた者が逃亡した場合、必要的に保釈等を取り消し、保釈金を没収します。

6 控訴審における判決宣告期日への被告人の出頭の義務付け等
  拘禁刑以上の刑に当たる罪で起訴されている被告人であって保釈等をされている者に対し、原則として判決期日への出頭を命じます。
  上記被告人が判決期日に出頭しない場合は、刑の言渡しができません。