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刑法・刑訴法令和5年改正について

2023.09.26

 令和5年、刑法・刑事訴訟法の分野において2つの大きな改正が行われました。一つは性犯罪について、もう一つは保釈に関してです。
今回は、性犯罪の改正について触れたいと思います。紙面の都合もありますおで、今回はその中から以下の2点について触れたいと思います。

1 不同意性交等罪(刑法177条)、不同意わいせつ罪(176条)の創設
これまでの強制わいせつ罪から不同意わいせつ罪へと改正されました。
また、かつて強姦罪と規定されていた罪名は、平成29年改正で強制性交等罪と罪名を変え、今回の改正で不同意性交等罪と改められました。
準強制わいせつ罪(刑法178条1項)、準強制性交等罪(同178条2項)は、不同意わいせつ、不同意性交等罪に吸収され一体となりました。
罪名の変更だけでなく、要件も大きく変化しました。
これまでの暴行・脅迫要件、心神喪失・抗拒不能要件が改められ、「8項目の対象行為または対象事由」+「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」が要件として規定されました。
対象行為・対象事由は以下の8項目です。
① 暴行または脅迫
② 心身の障害
③ アルコール又は薬物
④ 睡眠その他の意思が明瞭ではない状態
⑤ 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと
⑥ 予想と異なる事態に直面して恐怖させ、又は驚愕していること
⑦ 虐待に起因する心理的反応
⑧ 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益の憂慮
が対象行為になります。
また、条文上(上記の)行為又は事由その他これらに類する行為又は事由となっている点にも注意が必要です。
本来何が犯罪に当たる行為で何は当たらないのか明確であるべき刑法において、類する行為と不確定な要素を残すことに明確性の点から問題があるのではないか、あるいは処罰に値しない行為まで適用されることにならないのかについて疑問も呈されているところです。
今後の実務の運用や我々弁護人においても注視していく必要があると思います。

2 性犯罪についての公訴時効の延長
これまでの規定では、①不同意わいせつ等致傷罪、強盗・不同意性交等罪は15年、不同意性交等罪は10年、不同意わいせつ罪は7年でした。
改正後は①20年、②15年、③12年と各5年延長がされます。
また、被害者が犯罪行為が終わったときに18歳未満である場合は、18歳に達する期間を加算するなどの規定も設けられています。時効が完成していないものは、改正後の延長された期間の適用を受けることになります。

 【弁護士 相田 敦史】