着衣や所持品の損害について
弁護士の樋口です。
交通事故に遭われた場合、着衣や所持品も壊れてしまうことがあります。交通事故を原因として壊れてしまったのですから、これらについても、加害者側に対し、損害賠償を求めることができます。
では、具体的にどのように損害額を算定すれば良いでしょうか。
例えば、靴やiPadを壊されたとします。この場合、まずは、修理できる業者へ、靴やiPadを持参し、修理の見積書を作成してもらいます。この見積書により、各修理費用を把握することができます。
ただ、加害者は、事故当時の財物の時価額を、賠償すれば足ります。そのため、「時価額>修理費用」であれば修理費用、「時価額<修理費用」であれば時価額、を賠償すれば足りることになります。
それでは、事故当時の時価額とは、どのように算出すれば良いでしょうか。
確定した基準があるわけではございませんが、裁判所の傾向として、「事故による損傷の程度、事故までの経過年数等を踏まえて、購入価格に一定の割合を乗じた金額を、事故当時の時価額と評価する」ことが多いようです。
この場合、購入価格に乗じる「一定の割合」をどのように算出することができるか、考えなければいけません。1つの考え方として、減価償却資産の耐用年数を参考にする、という方法があります。例えば、パソコン以外の電子計算機の耐用年数が5年であることから、事故日から2年前に購入したiPadであれば、60%を乗じる、といった具合です。
事故直前に購入したものであれば、購入価額に近い金額を損害として算出することもできるかもしれません。
いずれにしろ、着衣や所持品が壊れた場合の損害の算出方法は、統一した基準がないので、上記裁判所の傾向を踏まえながら、試行錯誤することになります。