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成年年齢の引下げについて

2022.03.31 家族問題(相続・遺言、離婚)

1 はじめに
 成年年齢の引下げ等を内容とする「民法の一部を改正する法律」(平成30年法律第59号)が,令和4年4月1日に施行されます。
 この民法改正は,①民法第4条が規定する成年年齢を20歳から18歳に引き下げ,②同法第731条が規定する女性の婚姻可能な年齢を16歳から18歳に引き上げる等を内容としています。

2 成年年齢引下げの理由
 少子高齢化が急速に進行する日本では,将来を担う18歳,19歳の若年者の積極的な社会参加を促す等の観点から,18歳,19歳の者に憲法改正国民投票の投票権や公職選挙法の選挙権といった参政権が与えられることになりました。こうした事情を踏まえると,市民生活の基本である民法においても,自ら就労して得た金銭などを自らの判断で取引に使うことができる独立の主体として位置づけ,経済取引の面でも一人前の大人として扱うことが,法制度の一貫性・簡明性の観点から適当と考えられます。
 また,18歳,19歳の若年者は,大学入学や就職を機に独立した主体として生活している人も多く,これらの者の大半が何らかの形で就労し金銭収入を得ている傾向にあるため,単独で契約を締結することができるようになることは経済活動上も便宜といえます。
 これらの事情から,成年年齢を引き下げることにしたとの解説がされているところです(笹井朋昭・木村太郎編著『一問一答 成年年齢引下げ』9頁以下,商事法務,2019年1月20日初版第1刷発行)。

3 成年年齢引下げに伴う注意点
 未成年者が法定代理人の同意を得ないでした法律行為は,原則としてこれを取り消すことができます(民法第5条第2項)。この取消権は,判断能力が未熟な未成年者の消費者被害等を防ぐ重要な規定ですが,成年年齢引下げにより,18歳,19歳の人が行った法律行為には上記取消権が適用されなくなります。
 また,未成年者は親権に服しますが(民法第818条第1項),成年年齢の引下げにより,18歳,19歳の人は親権者等の保護を受けにくくなります。

4 成年年齢の引下げによっても20歳のまま維持される年齢要件
 成年年齢が引き下げられても,以下の年齢要件は20歳のまま変更がありません(なお,以下は例示であり,全てを網羅するものではありません。)。

 ・養親として養子縁組をすることができる年齢
 ・喫煙年齢
 ・飲酒年齢
 ・競馬,競輪,オートレース,モーターボート競走の投票権の購入年齢
 ・猟銃の所持の許可年齢
 ・国民年金の被保険者資格年齢
 ・大型,中型免許等取得可能年齢(大型免許は21歳以上)
 ・船長及び機関長の年齢

〔弁護士 塩野大介〕