かなで便り Kanade news

和解書(示談書)と免責証書の違い

2021.12.29 交通事故

 交通事故の民事損害賠償事件が交渉(裁判外)で解決となる場合,弁護士が受任をしていれば,一般的には書面に解決内容を記載することになります。
 このとき作成する書面には,①和解書(示談書)と呼ばれる書面と,②免責証書(承諾書)と呼ばれる書面の2種類があり,事案に応じて両者のいずれとするかを選択することになります。

 和解書(示談書)には,事故の当事者双方(被害者・加害者双方)が,署名押印をします。そして,書面には,「当事者は,本和解条項に定めるもののほか,本件事故に関し,何らの債権債務がないことを相互に確認する。」という文言を記載し,和解成立後には,その内容を覆したり,和解内容と異なる請求はできないことを確認しあうことになります。

 これに対して,免責証書というのは,損害賠償の請求をする一方当事者のみが署名押印をします。そして,書面には,「(請求者)は,○○円を受領することにより,すべての賠償義務者に対する損害賠償請求権を放棄するとともに,今後裁判上裁判外を問わず何ら異議の申し立て,請求をしません。」という文言を記載することが一般的です。
 免責証書の場合,事故の反対当事者(加害者側)は署名押印をせず,請求者(被害者側)が,一方的に承諾をする内容となりますので,加害者側から後日損害賠償の請求をされるということがあり得ます。
 そのため,事故で双方に過失が出て,加害者側にも損害が出ているようなケースでは,免責証書ではなく示談書を作成した方が適切という事案もあり,注意が必要です。

〔弁護士 塩野大介〕