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「生まれてから亡くなるまでの戸籍」が必要と言われたら

2021.04.26 家族問題(相続・遺言、離婚)

 戸籍は,人の出生から死亡に至るまでの親族関係を登録公証するもので,日本国民について編製され,日本国籍をも公証する唯一の制度です。

 相続の際に,被相続人(亡くなった方)の開設金融機関から,被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍が必要ですと言われることが多々あります。
言う方は簡単に言いますが,実際にはそう言われても結構な手間がかかることがあります。ただし,一回取得をしてしまえば,準備をした戸籍一式を法務局に提示することで相続人であることを証明する法定相続情報一覧図が入手できます。法定相続情報一覧図の有効性については,弊所1月27日付かなで便りもご参照ください。

 生まれてから亡くなるまで一つの戸籍しかないということは極めてまれであると思います。結婚して新たな戸籍を他の市町村で作る,あるいは法律の改正で戸籍が改製されたりすることが多々あるかれです。
そのため,「生まれてから亡くなるまでの戸籍」とは,現在の戸籍だけではなく,婚姻前や改製前までを含めて連続する全ての戸籍を各市町村から集める必要があります。そのため,人によっては数十通にも及ぶこともあります。
 また,連続するというところがポイントで,抜けていると提出した金融機関からこの部分の期間の戸籍が抜けている,追加で提出するようにと指示があるはずです。
金融機関は,連続した戸籍を確認することで亡くなった方の身分関係(配偶者や子供の有無)を確認しています。預貯金などを受け取る請求をしている方以外に,請求者も知らない(あるいは意図的に無視をしている)相続人がいないのかを確かめているわけです。他に相続人がいるにも関わらず,全額支払ってしまった場合には,後で正当な相続人から苦情や場合によっては損害賠償請求を受けるおそれもあるからです。

 戸籍には,戸籍謄本,戸籍抄本,全部事項証明書,個人事項証明書,除籍謄本,改正原戸籍といった様々な名称があります。呼び方が異なる戸籍が存在し,戸惑うかもしれません。簡単にいうと,戸籍謄本(とうほん)とは,ひとつの戸籍に記載されている全員分に関する記録の写しです。
 戸籍抄本(しょうほん)は,戸籍にいる一部の人の記録を記載した写しになります。戸籍は,それほど昔ではない時点まで紙による管理でした。しかし,火災や水害によって紙の戸籍が消失するおそれもあり(過去には空襲などで消失したこともあります。)現在は電算化(コンピュータによる保管)しています。
 戸籍の証明書は本籍地でしか取れませんので,本籍地の市区町村に請求することが必要です。直接出向くだけでなく,郵送で請求することもできます。
 戸籍を全て集める方法は,新しい戸籍から古い戸籍へ遡っていく方法が一般的です。あるいは,判明している戸籍から前後に調査を進めていくという方法もあります。
 請求の際には,「誰々についての出生から死亡までの戸籍」と必要な範囲を記載しておくと当該市区町村に生まれてから亡くなるまでの戸籍があれば一度に集めることができます。
 もっとも,そうした方は,非常に少ないと思われます。
 生まれたときの戸籍まで遡れない場合は,一つ前の本籍地に請求をします。
 一つ前の本籍地は,「〇〇(市区町村)から入籍(婚姻の場合)」,「〇〇から転籍(籍を移すこと)」といった記載の〇〇に該当する市区町村に請求をします。
 従前の本籍の記載が見当たらない場合は,「○年〇月〇日改製」といった改製の文言がないかをご確認下さい。
改製の文字があれば,改製前の戸籍が存在しますので,同じ本籍地に「改製原戸籍謄本」を請求してください。
 こうしたことを繰り返すことによって,生まれてから死亡するまでの戸籍が晴れて取得できるということになります。このように,場合によっては相応の日数と実費がかかることがありますのでご注意ください。
 弊所にご依頼をいただきました際には,上記手続きも代理人として遂行致しますので,お気軽にご相談ください。

〔弁護士 相田敦史〕