かなで便り Kanade news

台風15号,19号による被災について

2019.12.02 その他

 弁護士の相田です。

私どもが事務所を構える千葉県では9月に台風15号,その後連続するように10月には台風19号による大雨災害と立て続けに災害に見舞われました。この度の台風15号,19号により被災された皆様にお悔やみとお見舞いを申し上げます。

 当事務所付近でも街路樹が根本からなぎ倒され,店舗にも被害が出るなど,災害の爪痕が刻まれていました。
 私自身,こうした大規模災害が起きた際の法的サポートあるいはアドバイスについて,普段あまり馴染みや経験がない分野でもあり,弁護士としてどのようなことが出来るのかを考える契機となりました。
 千葉県弁護士会では,一連の台風災害を踏まえて,10月に大規模災害が起きた際に,弁護士としてどのような支援やアドバイスがあり得るのかについて災害支援について詳しい知見を持つ,静岡県の弁護士を講師に招いての研修が緊急開催されました。
 私も研修に参加をしてみましたが,なるほどと思うことや被害回復までの道筋の長さなどを感じました。その中から3点ほどご紹介をします。

 1点目として,被災に対して,どのような支援制度を使うかについては,個々人の状況に応じて,様々な組み合わせを慎重に検討する必要があるということでした。各種支援制度は,様々存在するものの,この制度を使用すると,他の制度が使えないといった制度が複雑に絡み合っています。更には,特別法に基づく支援なども作られることもあり,ある人へ有効な支援が他者にも有効とは限らないという側面があり,行政との連携・確認もまた重要となるとの指摘がありました。

 2点目として,屋根瓦が飛ばされるなどしたため,ブルーシートを張ることになった居宅なども多数存在します。今後,実際に屋根の修繕が完了するまでにかる期間は,場合により年単位というスパンで考える必要があるということでした。大規模・広範囲の被災地では修繕にかかる期間も,順番待ちということもあり,そうした長期の視点から,具体的にどのような選択肢を採るのか,例えば,家に住みながら修理を待つのか,あるいは建て替えるのか,それとも売却して引越すという選択肢するのか,現実的な選択を一緒に考える必要性があるということでした。

 3点目としては,半壊,全壊などの区分についてです。やはり,区分によって支援額なども変わってきます。被災建物を,壊してしまってからでは証拠がなく区分について争うことが出来ないといった事態が生じます。区分の認定には,屋根,壁,床等,各部分に数値が割り振られており,その合計値で半壊等の区分が決まるという制度設計となっています。そのため,目につく場所だけでなく,きちんと各部分の被害についてきちんと写真などの証拠を残すこと,そうした各部分の損害を積み上げ,適切な区分認定を受けること,そのために資料を保全することの重要性を力説されていました。
 今後も今回のような台風被害などは起こりえる事態でもあり,こうした制度理解の大切さを痛感した一連の出来事となりました。

 なお,自然災害の影響で,住宅ローンなどの返済にお困りの場合,「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」により住宅ローンなどの免除・減額を申し出ることができることがあります。この制度は,手続支援が無料となっており,法的手続と異なり個人信用情報(ブラックリスト)に登録されないなどのメリットがありますが,災害後に新たな新築再築の住宅ローン融資を約束したり,新たな住宅ローン契約を締結した場合には原則として制度利用ができませんので,なるべく早めに弁護士にご相談ください。